2-3.日本の精神科医療政策の過ち

私は日本の精神科医療政策には、過去にいくつかのあやまちがあったのではないかと考えています。

第一のあやまち 昭和30年代に経済的な支援措置により、民間精神科病院をたくさんつくり、収容型の精神科医療政策をとったこと

第二のあやまち 診療報酬上の精神科療養病棟制度をつくり、(結果として)社会的入院患者の入院を維持するシステムを作ったこと

第三のあやまち 精神科病院に認知症の方を入院させていること

この第二のあやまちと第三のあやまちには関係があります。
平成6年、将来の医療費の推定を行おうとした国が包括払い制度の導入を提案したところ、内科、外科等が拒否する中で精神科が受け入れました。そのご褒美として、包括払いの精神療養病棟入院料には高めの金額が設定されました。(同時に精神保健指定医1名を病棟担当にすることや広めの廊下幅、一人あたりの広めの病床面積などの施設基準が定められました。)多くの民間精神科病院は安定した収入が期待できる療養病棟を(借金して)つくりました(現在、約10万床あります)。しかし、精神科特例レベルの人員配置でマンパワーが少ない精神療養病棟では、本当に入院治療が必要な「手間のかかる患者さん」はみることができません。また、包括払いの精神療養病棟においては、「医療行為がそれほど必要ない、手間のかからない患者さん」、いわゆる社会的入院患者を入院させておいた方が、病院の経営が安定することになります。こうして、事実上、診療報酬上の精神療養病棟制度が、社会的入院患者の入院を維持するシステムになってしまっています。

現在の精神科医療状況から考えて、精神科急性期病棟の必要性が全くなくなることはないでしょう。その必要数についてはどうでしょう。急性期病床の必要数は、患者の入退院データから計算して6万床程度であるという報告もあります。精神科救急において最も大切なのは、身体疾患のために精神症状を生じている、いわゆる症状精神病のケースをきちんと診断除外することです。このためには、少なくとも2次救急レベルの身体病院としての機能が必要であり、精神科救急を行うべき病院は総合病院精神科ということになると考えています。
慢性期病床で必要なのは3-4万床と考えられ、全部で10万床あれば十分です。そうすると現在の病床数35万床と10万床の差、約25万床が余剰であるということになります。
厚労省が打ち出していた7万2千人の社会的入院患者の退院促進は、単なる通過点に過ぎないことがわかります。
すなわち、統合失調症の長期入院患者の減少で空いたベッドに認知症の人を入院させ、一時的に入院数を確保しようとするやり方は、問題の先送りに過ぎず、かえって傷が深くなってしまうということです。

民間に箱物をつくらせるとコスト回収のために使い続ける必要が出てきてしまいます。今後早い段階で、まず箱物をなくす=病床削減させる政策が必要であると考えています。

更新:2013/2/3

ページ上部へ戻る

Copyright @ Hideki Ueno. All Rights Reserved.