精神保健指定医 不正取得問題

川崎市の聖マリアンナ医大病院にて精神保健指定医資格の不正取得が明らかとなり、20人の指定医資格が取り消されました。

これは日本の精神科医療制度を根本から揺るがす大問題です。

精神科医療は精神保健福祉法で規定されています。私たち精神科医は、精神保健福祉法に則って医療を提供するように訓練されます。そして、精神保健指定医の資格を持つと強制的な入院の決定や入院中の行動制限の指示が出せるようになります。精神保健指定医は、5年間以上の臨床経験(うち3年以上の精神科臨床経験)を持つ医師が所定の講習を受講し、8例のケースレポートを提出し合格すると厚生労働大臣から与えられる資格です。8例のケースレポートの採点ポイントは、精神保健福祉法に定められた非自発的入院制度や行動制限の制度に関してきちんと理解しているかどうか、です。
満足のいく内容のケースレポートを書くのはとても大変です。私もずいぶん苦労しました。
また、私の指導の下で診療をしたケースレポートの添削をいくつかやりましたが、このレポートを読むと書いた人がどの程度精神科医療に関して理解しているか、日本の精神科医療制度に関して理解しているか、手に取るようにわかります。

そして、精神保健福祉法における精神障害者の人権制限規定は、過剰とも言える精神保健指定医への信頼のものとに成り立っています。
この精神保健指定医への信頼は、法律に規定された臨床経験を積み、きちんと症例を診療して、ケースレポートも自分で書いたという前提の元に成り立っているものです。

そもそも精神保健福祉法に規定されている行動制限の手続きは、一人の精神保健指定医に権限が集中しており、本人の権利を守るための仕組みがありません。精神保健指定医の恣意的な判断による行動制限を防止することができない制度設計になっており、「個人の尊厳を尊重し、人権に配慮した適正手続き」とはいいがたいものです。
さらに今回のような不正があきらかになったことで、精神保健指定医の資格に対する根本的な信頼が崩れ去りました。

改善のためには、本人の権利を守る仕組み、例えば、入院患者一人一人に権利擁護者をつけるなどの仕組みが必要です。

厚労省の審議会「新たな精神保健医療体制の構築に向けた検討チーム第3R」でも入院制度、保護者制度に関する議論があり、入院患者一人一人に権利擁護者をつけることなどが検討されました。
新たな地域精神保健医療体制の構築に向けた検討チーム

しかし、入院患者が30万人以上、非自発的入院に限っても全国に12万人以上いる現状では、対象者数が多すぎて制度構築が困難なのです。
病床数の削減が急務です。

東京新聞に指定医不正取得問題に関する社説が掲載されました(平成27年4月24日付)。
精神保健指定医 「性善説」では立ち行かぬ

更新:2015/4/18

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