身体拘束に関する研修

クローズアップ現代+の番組を題材に、身体拘束の研修をしています。
この研修の中では、参加者ひとり一人に身体拘束に関して考えてもらいます。

ポイントは、2つの立場から考える実習です。
ひとつの立場は、「適切な治療のために身体拘束は必要であると考える立場」、もう一つは、「身体拘束を全廃すると決めて、一つ一つできることを探して、実践していく立場」です。実習では、講師の私が「適切な治療のために身体拘束は必要であると考える立場」にたち、参加者には「身体拘束を全廃する立場」に立ってもらいます。
グループワークの中で、「身体拘束が必要であると考える私」を説得してもらいます。

こんなケースを利用します。
<ケース>
夜間になると突発的な暴力行為が認められる80歳の高齢男性。点滴の必要性があるのに、いくら説明しても理解できずに自分で抜いてしまう。それも思いっきり引っこ抜いたりするので、血の海になったりすることもある。
そして現場は常に人手不足・・・

このケースに関して、私が「適切な治療のために身体拘束は必要であると考える立場」から、拘束が必要な理由を以下のように述べます。

・暴力は突発的で予測が不可能。本人にとっても危険が大きく、身体拘束は必要。
・他の入院患者さんへの他害行為の恐れもある。他の方を守るために身体拘束は必要。
・身体拘束をしていれば、突発的な暴力におびえることなく、近くに寄り添ってケアができる。身体拘束はケアの質を上げることにもつながる。
身体的な治療のために必要な点滴を、理解できずに抜去してしまう。脳梗塞予防のために血液をさらさらにする薬を内服していたりすると、出血が止まりにくく、本人の危険も大きい。身体拘束は必要。
・ふらふらと歩き回ることも多く、転倒の危険性も高い。本人の安全を守るために身体拘束は必要。転倒してけがしたりしたら、家族から訴えられる可能性もある。
・夜勤帯は少ないスタッフでたくさんの人をみなくてはいけない。やらなくてはいけないケアもてんこもり。こんな人がいたら、他の人をケアすることができない。身体拘束によって他の人に対するケアの質を上げることができるから、身体拘束は必要。

これに対して、参加者には「身体拘束を全廃する立場」から私を説得してもらいます。

いろいろな意見が出てきます。
これまでの意見の中で、ひとつ素晴らしいと思ったのは、「相手を人間として見ることができるように、人間として接することができるように工夫している」という発表でした。その事業所では、利用者のアルバムや映像を持参してもらって、スタッフに見てもらいます。写真や映像にまつわる逸話も含めて説明してもらうそうです。そうしたら、相手を人間として見ることができるようになるからと。

たとえば、夜間せん妄で火事場の馬鹿力で暴れている人は、ふつうにみるとモンスターにしか見えません。人間として見ることができなければ、まず薬で鎮静かけてしまおうとか、それでもだめなら身体拘束してしまおうとか思ってしまいます。人間として見ることで、どうしてそんな状態になっているのか、正常心理で考えることができるようになるのです。

上記のケース、拘束が必要な理由を考えはじめたらいくらでも見つけることができます。
でも、拘束をしなくてもすむ工夫もたくさん見つけることができるのです。

例えば、
・夜間になると突発的な暴力をするというのは、夜間せん妄、意識障害を生じている可能性がある。せん妄状態、意識障害の原因として、身体状況、内服内容をチェックし、改善することで改善する可能性があるかも知れない。
・夜間になって暴れたりするのは、周囲の環境に混乱しているためかも知れない。本人にとってのなじみの環境を作り出すことで落ち着くことができるかも知れない。
・日中の過ごし方が問題で、夜間に十分に睡眠がとれず、暴力を生じているのかも知れない。日中の過ごし方を考えたら、改善の糸口が見つかるかも知れない。
・そもそも点滴をする必要があるのかどうかを検討すること。さらに、ずっとついていられる時間帯で済ませるように工夫したりすることができるかも知れない。
・転倒しても大丈夫な環境を整えたりする工夫。
・そもそも入院させないですむような工夫を考えること。

まず、「拘束をなくす」という立場に立って、できることから一つ一つ積み上げていくことが重要なのです。

更新:2018/1/20

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